精神科医のブログ 臨床・生活・教育・経済

精神科医が語る、医療、生活、教育、経済のブログです。

何が信頼できる情報か?

前回は一つ研究をご紹介しました。このサイトでは色々な研究を紹介していこうと思いますが、果たしてその研究が信頼できるかといことも考えなければなりません。

 

研究には色々なスタイルがあります。たとえば、○○を飲んだら効いた!という一人の感想とか、何人もあつめて、飲んだ人と飲まない人を比較したなどなどです。

 

一番信頼できないのが、偉い先生が私はこう思っている、というものです。良く色々な宣伝でなんとか博士の写真付きで商品が売られていますよね。実験や検討もせずに個人の経験で話すわけですから、証拠がありません。

 

次に信頼できないのが、症例報告です。これは、Aさんはこれを飲んで良くなりました!というものです。一見これは効くかもと思ってしまう訳ですが、もしかするとAさんはそれを飲まなくても時間とともに良くなったかもしれません。友達がこれが効くよと言いながら、自分には効かなかったということはありませんか?本当に効くか効かないかは、あるものを使った時と使わない時で比較しないといけません。

 

というわけで、比べようと言う発想が出てきます。まず、病気を持っている人と、そうでない人を集めて見ます。それから、それぞれのグループで、あるものを使っている人とそうでない人がどれだけいるか見て見るのです。病気でない人であるものを使っている人が多ければ、これは効果がありそうと思いますよね。

ところが、この方法は実際には後付けです。例えば年齢、性別、職業、食べているもの(無数・・・・)、習慣(無数・・・)などなど比べて見たら、なにかかにか違いがあるものです。違いがあるものを取り出して、これが効くといったところで、本当にそれが効いているのか信頼できません。

 

そこで、じゃあ、後付けでなく見て見ようと言うことになります。あるものを使っている人、あるものを使っていない人を追跡していって、その後、どちらが治るのかとかを見ていきます。こうすれば、後付けではないのでまだ信頼ができます。

ただ、ここでも問題があります。ある物を使っている人はそういう積極的な姿勢だから良くなったんじゃないかとか、良くなりそうな人を選んである物をつかったんじゃないか、とか考えることもできます。商売をする人だったら、そうしそうですよね。

 

そこでそこで、そういうよこしまな意思が入らないように、ある物を使ってもらう人とそうでない人をくじ引きのように、ランダムにきめてしまおうという方法があります。ランダム=無作為にあるグループとあるグループに分けて比較しよう、というところからランダム化比較試験とか無作為化比較試験と言われたりします。

こうすれば、理論的には二つのグループは似たようなグループになるので、変な意図も入らないし最も信頼できる研究と言えます。

 

ただ、さらに信頼できる研究があります。それは上記のランダム化比較試験をたくさん集めてきて、その結果を全部総合して、今の世の中の研究を全部合わせると、最終結果はこうです!という研究です。これをメタアナリシスといいます。メタというのは個別のものを超越して全体をみるようなイメージです。アナリシスとは分析という意味です。

 

以上から、みなさん、何か誰かが言っていたらメタアナリシスやランダム化比較試験かどうか見て見ましょう!

 

 

 

 

うつ病に行動活性化は良い

昨日は認知行動療法の中で、行動活性化が注目を浴びてきていることの御紹介をしました。(認知療法もとても役に立ちそうということもご紹介しました。)

行動活性化は専門的な訓練を受けていない人が行っても効果があるかもしれないという研究があるのでご紹介します。

 

あまり行動活性化に習熟していない人がやる行動活性化と、心理士が行う認知行動療法を比べた研究です。

 

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

研究参加者:18歳以上のうつ病患者(イギリス)

比べたもの:精神科関連の医療関係者だけれどもカウンセリング専門ではない者が行う行動活性化 対 心理士が行う認知行動療法

いずれも16週間で最大20回(1回1時間)のカウンセリングを行います。(ただ実際には11,12回ほどが平均回数でした)

何で結果を判定したか?:1年後の落ち込みの点数

結果:両者は同じ効果。しかも、コストが48000円ぐらい安い!

 

多くの方に行動活性化の方法が定着すれば随分と有用ですね。

 

認知行動療法、認知療法、行動療法

カウンセリングといっても色々あります。

幼少期の親子関係を聞いて見たり、夢を話してみたり、箱庭つくってみたり・・・

その中でも研究で効果があると証明されているのが、認知行動療法です。(他に効果が証明されているのが、対人関係療法とか持続的曝露療法とかEMDRなどなどがあります)

ただ、他のカウンセリングが効果がないと言っているのではなくて、他のカウンセリングは研究で効果を証明しづらいと言うことなのです。

認知行動療法などは、カウンセリングの手順書が書きやすいので、訓練をすればどんなカウンセラーでも似たようなことができます。ところが、夢を話すとか、幼少期の親子関係を解釈するとかいうことになると、どうも経験が物を言うらしく、手順などといっていられないので、カウンセラーによって随分と結果が違うというふうになるのです。

 

認知行動療法というのは、認知=物の考え方のバランスをとったり、行動によって気分を変えようという療法です。

調子が悪くなると偏った考え方になりがちなので、そこを立ち止まって修正するということが認知からの方法。楽しい行動、達成感のある行動をすることで気分を改善したり、現実的な問題をしっかりとした方法を使って解決しようというのが行動からの方法です。

私が認知行動療法をやりはじめたころは、どうも物の考え方を修正していくより、行動に働きかけた方が改善が良いような気がしていました。実際に認知行動療法と行動に焦点を当てた行動活性化は同等という研究も最近出てました。(下記はまた機会をみて詳しくご紹介しようと思います)

www.ncbi.nlm.nih.gov

ところが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する認知処理療法というものをやり始めると、これが非常に効果的ということをかなり実感します。これは、行動ではなく、認知に働きかける治療なのです。

ということで、認知療法の強さがすごいなあと実感する日々です。

 

はじめに

精神科医療に携わってまずまずの時間が経ち、総合病院、精神科病院、クリニック、往診、果ては海外など様々な場所で働いてきました。

しっかりとした知識や技術が身についてきた今、1対1の診療をこえて、より多くの方のお役に立つべき時期になったと考え、ブログを開設することにしました。

精神科医療と言うと、一体どんな医者やカウンセラーがいいのか、どんな治療法が良いのか迷うことも多いと思います。

実際の所、これが正解ということは言いづらいことも多々ありますが、これまでに得た、そうしてこれから得る経験や知識から情報を発信していけたらと思っています。

少しでも世の中に貢献できれば、これ以上の幸せはありません。

 

また、専門以外にも自分の子どもの教育や、自分の生活を立てていく経済など、思いつく限り色々と記事を書いていこうと思います。

 

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